利休の闇

著者の加藤さんにお会いしたのは10数年以上前だったか、私がまだ会社にいたころに業務で来社された加藤氏は当時経営指導のコンサルタントであった記憶している。失礼な言い方だが、もっさりした小男といった御風采で、その後彼が「信長の棺」という歴史小説を書いたところ、当時の首相小泉純一郎がファンになったということから、本が大いに脚光を浴び、ベストセラーになったのには驚いた。の後いくつかの歴史小説を出されたようで、これが最新作。著作は秀吉がらみの話が多いが。これは秀吉に茶道を手引きした利休を中心にした話。(利休という名はずっと後に秀吉に授かったもので、この小説の大半は、「宗益」という茶道の名で登場する。――因みに利休の名の「利」は本来茶人の避ける字で秀吉の嫌がらせが始まっていた印だということだそうです。)秀吉の時代に茶道がなぜ武士の間で流行したのかーそれは親分の信長が茶道に打ち込んでいたからに他ならない。

旨く行っていた秀吉との関係が、天正11年秀吉が天敵柴田勝家との決戦の前に山崎の「待庵」で開いた茶会の頃から、茶道に対する姿勢・考え方の食い違いから徐々に崩れて行き、また利休の秀吉に対する政治がらみの対応が不味かったこともあって、最後には秀吉に憎まれるようになり、利休の人生は秀吉に強いられた割腹死で終焉する。

その経緯を追った著者の綿密な資料調べは大変なものだが、全編を通じてなんとなく物足りない感じが免れないのは、著者の利休に対する愛着というか尊敬というかが足りず、読み終えて、とにかく主人公をもう一つ好きにはなれないことだ。歴史としては分かるが、小説としてはそこがもう一つ不満のあるところである。なお文章の書き方で、行替えが詩のように多くて、異様でもある(例は例えば127頁)。いかなる効果を狙ったのだろうか?茶事に必須の茶碗にご興味のある方には、とても面白い小説と思います。

孫 正義の参謀 ソフトバンク社長室長3000日

著者は身長180㎝、体重90キロという偉丈夫。松下政経塾に入校し選ばれて東京政経塾代表になったが、その後衆議院選挙に立候補して当選して民主党議員となり、菅・鳩山・岡田3氏の補佐役として活躍した。しかし小泉総理のやった「郵政選挙」で落選して転身、2005年末にソフトバンク社に入社、孫社長の下で社長室長を8年間務めた人物。ソフトバンク社の孫社長は、大胆な経営戦略に長け商売上手で、やたらに元気は良いが、NTTなどの既成戦力に楯突くことも多く、現状維持に傾くことが多い政治家・官僚などへの対策には若干弱みがあった。一方で嶋氏は政経塾のルートもあり、逆に政界・官界には広い人脈を持ち、対政治家・官僚対策には自信満々。よい組み合わせとなって、孫社長の弱みを補って目覚しい働きをしたらしい。彼はきっちり日記をつけていたので、日記に基づいて細かいところまで再現しながらこの本を書いたという。山場は4つあって、 続きを読む

2015/8月

  年配の方はきっとお子さんお孫さんで賑わい、若い人たちは、親御さんのもとへお帰りなのだと思いながら。 夏休みを取ろうと、私も、長女の長女と、3女の長女の孫2人と、やって来ました。姉妹と違って従妹同士だとなかなかいい関係を作ってやっています。 まあ、7歳離れているから喧嘩にもならないのでしょうが。 今日(11日)は2人で<ぐらんぱる>で楽しんできたようです。高1も小学生に戻って。(ウォーター・バルーンとトランポリンが一番とのこと) 何ですか、今年はわが家は、スズメバチに好かれているようで、先月から人の出入口の上に立派な巣を作ってくれます。噴射式駆除剤を使っているのですが。ついに、和室の屋根裏に・・・? みなさんも気をつけてください。 新聞、テレビ、映画等で戦後70年を忘れじと、さまざまなドラマやドキュメンタリーが、放映、報道されていますね。 14日文庫開館日です。雨もあがりました。 なかなか評判のようですが、『火花』『流』を最初に読まれた方、いかがでしたか。 戦争にかかわる本を少し別置してみました。5月とまた別の本もあります。手にとって見てください。 私は終戦の時、1歳10か月でした。前橋(群馬)に疎開していましたが、母は家を守るために残り、祖母は私を負ぶい、当座の必需品を乳母車に積んで田んぼの畦道を走ったそうですが、わきの小川に落ち、B29を避けて濡れ布団を被ってやり過ごしたと、何度も何度もあとになって聞いたので、自分がまさに原体験をしたように思っています (忘れたい記憶をお持ちの方がいらしたらごめんなさい)。悲しみや憎しみのみでなく、戦争は戦う両者に不条理なことだと、体験していない子どもたちに大人はどう、伝えればよいのでしょう。そのまえに、熱中症対策と健康維持が大切ですね。 今回も、新しい本、いただいた稀有な本、どうぞ、お楽しみください。

フォト・ストーリー 沖縄の70年

41-E9xR3hPL石川 文洋 著 岩波新書 2015年4月第1版著者は沖縄生まれのフォトジャーナリストで、いわゆる戦場カメラマンでもあり(ベトナムの取材記録が生かされている)、商売柄、写真がいっぱい入っていて、沖縄に関するすべての問題を網羅していて、読みやすくて立派な本。沖縄の歴史は小国(日本に統合される前は、琉球王国だったのだ)の悲しい運命を象徴している。日本に吸収されなかったら、中国の一部になっていたのだろうか。太平洋戦争時の救いのない悲惨な戦場の話、占領されてベトナム戦争の基地になったこと、その後の基地定着化の悲劇、すべて全くついていない沖縄。ここには書いてないが、日本の皇室に対する沖縄人の特殊な思いー昭和天皇がマッカサー元帥に、沖縄の占領は長期にしてほしいと言ったという事実―なども沖縄人の喉に引っかかった棘になってもいるだろう。「あとがき」で辺野古移転問題に関して、著者ははっきりと安倍晋三政権を批判し、政権に妥協した仲井眞前沖縄県知事を「史上最低の知事」と断じている。

吉田健一

51fR1L3RX0L._SX351_BO1,204,203,200_長谷川 郁夫著  新潮社刊  2014年9月第1版ずっしりと重く5000円もする本。著者は「編集者」で、自分の出版社も持っていたが、それは潰してしまったらしい。
文学者の評論を書くには、同業の文学者でもよいのだが、編集者が書くというのもあり、その場合は特定の文学論に立脚して(それにこだわって)書く文学者による評論とは異なってやや平凡になりやすいものの、事実を公平に正確にもれなく記すというメリットがあるみたいだ。この本は事実を徹底的に網羅・記録しているようで、いわば吉田健一全記録というところに価値があるのかも。小説や詩を書くわけではない吉田健一は、やや一般的な人気は起こらないが、池澤夏樹編集の日本文学全集には1冊で採用されているように、プロの文学者の間では評価が高いようだ。それにしても、吉田健一の大酒吞みと健啖家ぶりには恐れ入る。

ケアのカリスマたち―看取りを支えるプロフェッショナル―

上野千鶴子著 亜紀書房刊 2015年3月第1版

私はケア前から上野千鶴子のファンである。フェミニストと呼ばれているが、
とにかくやわな女性ではなく、彼女と議論しても、其処等の論客は一発でノックアウトされてしまうだろう。
頭脳明晰に加えて勉強家で、リアリストだから、事実をよく調べてきちっと押さえている。
彼女の名著「おひとり様の老後」(2007年)の発展したこの本は、いよいよ、どこで、どう死ぬか「いかに死ぬか」の大問題を取り上げている。

彼女自身が、独身、構ってくれる家族はいない、しかし病院では死にたくない、自宅で、一人でうまく死ぬにはどうしたらよいのかという観点から、医療と介護の現実に迫っている。
面談相手の11人がみんな凄い人達で、著者のご希望に対応してくれそうな場所もある。
まあ介護保険ができているので、現実性が出て来たが、幸福な「自宅死」の実現にはまだ一寸時間がかかるかなと思うけど、方向は賛成ですね。

(個人的には私もある大病院に1か月弱入院したとき、廊下を歩いていて、「病院で死ぬということ」がどういうものかを見せられました。
ある狭い個室で瀕死の患者が医者に最後の凄い心臓マッサージを受けているところ、その病人は亡くなったが個室が狭いので、廊下で泣きじゃくっている親族たち、さりげなく来る黒服の葬儀屋さん、
思い出すだけでぞっとしますね。)

7月の文庫は・・・

7月の文庫は、特にお天気が気がかりです。殆どこの時期台風が接近しているからです。
週末千客万来(少し大げさ)なので、今日は早朝から母屋の寝具の洗濯、布団干しをしました。
夕方から雨の予報でしたから。3時頃ポツリと来て慌てて布団や洗濯物を取り込んだのですが、日にちが変わって今は霧雨のようです。
外は靄っています(16日1:30am※この後、雨は音を立てて降り始めました。)。どうぞ、日曜(海の日のおはなし会)、月曜(子どものためのおはなし会)に台風がずれ込みませんように。
つたない文庫便り(Mr.Nに言わせると誰もほとんど読んでいないよ)ですが、いつも表紙のスペースを埋める苦労があります。
今までの7月の文庫便りを繰ってみました。以前はもっと工夫があったような気がします。感性も鈍ってきていますね。これも年のせい?!
そんな時のお助け本は、階段の脇の「詩・ことば」の書棚です。
様々な詩集のほかに、『食彩の文学事典』『日本人の愛したことば』『できる大人のモノの言い方大全』『広辞苑の中の掘り出し日本語』『昭和ことば辞典』『月の名前』『くらしのこよみ』等など。
ペラペラめくるうちに、文庫便りのネタ探しを忘れて読みふけったりします。たまには、頭の体操にどうぞ。
雨がウッドデッキの汚れを洗い流してくれましたが、風が強くなって姫沙羅が大きく揺れています。
一面靄の中 (16日)。
今月の沙羅の樹文庫は、玄関先の雨どいを新たにし、もっこうバラの柵ができ、少しお掃除も念入りにして、更なる1年を迎えようとみなさんをお待ちしています。ひぐらしが鳴いています (17日)。
海の日のおはなし会も今年で15回、ぜひぜひいらしてください。子どもたちも頑張ります。週末、お天気になあれ!

第15回海の日のおはなし会プログラム

  • 2015.7.19

  • 午後4:30~7:00

  • 伊豆高原駅前広場・大くすのきの下

海の日1このおはなし会は伊豆急行の後援を受けて、2001年から毎年、海の日(祝日)の前日に開催しています。樹齢150年のくすのきの下で、この地に住まう人々や、休暇で訪れた旅人に、夏の風物詩として、人の声が奏でる美しい日本語の語りをお届けしたいと考え、始めました。語り手は日本のあちこちで、子どもに、おとなに、おはなしを届けている人々と、地元の子どもたちです。

  1. ピルカコットがふるいじゅもんを、おもいだします
    『プチコット 村へいく』(安藤美紀夫作 新日本出版社)水野 空奈(小3)
  2. 大安売り 『えほん寄席 満員御礼の巻』(小学館)片岡 晴哉(小4)
  3. おーい、でてこい(星新一作)
    『中学生までに読んでおきたい日本文学・ふしぎな話』本岡 あかり(小5)
  4. 語られなかったお話、歌われなかった歌
    『三分間で語れるお話』(マクドナルド著 佐藤凉子訳 編書房 秋吉 海帆(小6)
  5. ふぐはうち 『化かす騙す』(藤田浩子著 一声社)秋吉 崇亘(中3)
  6.  メリーさんの電話
    『うらからいらっしゃい―七つの怪談』(斉藤洋作 偕成社)小林 啓子
  7. へびむこ (または) よなきそば (市川の昔話)高桑 弥須子
  8. 音楽とうた 『うみ』ほか Akino(水野明乃&水野敏宏)
  9. やまなし(宮沢賢治作)増山 正子
  10. おしどり 『怪談』(小泉八雲作 平井呈一訳 岩波文庫)西村 敦子
  11. 緑衣の人(中国の昔話) 『聊斎志異』(岩波文庫)早乙 女由美子
  12. 奥さまの耳飾り 『夢の果て』(安房直子作 瑞雲舎)澤口 杜志
  13. 梅津忠兵衛
    『怪談―小泉八雲怪奇短編集』(平井呈一訳 偕成社文庫) 吉田 美佐子
  14. 湖の王女、ミーナクシ
    『人になりそこねたロバ』(タゴール暎子編訳 筑摩書房佐藤 凉子

 

2015/6月

2015-6 たまに来て、立ち込める霧の中も別世界の風情があっていいですね。でも今日は寒いです(19日)。
きのう来て、新緑の5月もよいけれど、姫沙羅の花が地面を敷き詰める6月もなかなかだと思いました。
今回文庫便りにちりばめてしまったのですが、私は白い花が好きです(東京でも、クチナシ、白ぼたん、ハナミズキみんな白)。
今年はどこへ行っても紫陽花が早くから様々な色で目を楽しませてくれましたが、やはり白がいい。
Fさんが植えてくれたアナベルを門わきだけでなく庭の奥にみつけて嬉しくなっています。せっかくの白もっこうが昨年秋の台風で犠牲になったので、また伸びるのを待っています。

ところで、バラも好きなのですが、東京からおはなし会を聴きに来てくれた友人に誘われてはじめて5月に河津のバラ園に行ってきました。
意外と狭いのですね。そこでも、様々なバラのかたちと匂いを楽しみました(特に白を)。
ここらで談義はやめにして、60有余年、ありがたいことに健康を維持してきて、70の坂を超えた途端、体がしゃきっとしないことに戸惑っています。肩の手術からこの月末でちょうど1年。ここで気力挽回と行きたいところなのですが。
5月はおはなし会の参加者もいつもより多く、また、熱心に聴いて褒めてくださった方がいたそうで、語り手も語りがいがあったと思います。励みになります。
7月は19日(日)高原駅で海の日のおはなし会です。文庫の子どもたちも、東京以北からの常連語り手たちも15周年で張り切りますので、ぜひぜひ聴きにいらしてください。
社会全体きなくさい感じです。しっかり自分で判断できる目を持ちたいですね。西村